旅行業の登録に必要な費用について
旅行会社の法務アドバイザー、谷内田です。
旅行業の登録をするためには
①資格者の設置
②会社の資産状況の確認
という、2点が特に重要視されます。
今回は、②会社の資産状況の確認という観点から、旅行業の登録をするためにはそもそもどれくらいの資金を準備すればいいのか、ということを解説していきます。
営業保証金(弁済業務保証金分担金)
まず、旅行業の登録をするためには営業保証金を納める必要があります。
この保証金は大きく分けて
①どの種類で旅行業登録をするのか
②旅行業協会に加入をするかどうか
という2点で、納める金額が大きく変わってきます。
どの種類で旅行業登録をするのか
第1種の登録をしようと思うと、保証金の金額は7000万円です。
第2種は1100万、第3種は300万、地域限定は15万と、それぞれ金額が定められています。
営業保証金 | |
第1種旅行業 | 7000万 |
第2種旅行業 | 1100万 |
第3種旅行業 | 300万 |
地域限定旅行業 | 15万 |
<表1>種別ごとの営業保証金 |
ちなみに、旅行業者代理業と旅行サービス手配業については保証金は不要です。
この保証金は、通常は現金で供託所へ供託することになります。
第3種や地域限定であれば現金での供託も可能かもしれませんが、第1種や第2種ではかなりハードルが高いですよね。
7000万円を現金払いだなんて、よほど財務状況が安定している会社でなければできないはずです。
そこで、登録をしたい方の負担を減らすために、②の旅行業協会に加入するかどうかという点が重要になります。
旅行業協会とは、旅行会社が所属することができる業界団体のことです。
旅行業協会に加入するかどうか
どういうことかというと、旅行業協会に加入をすると、保証金の金額が5分の1で済むという制度になっているのです。
つまり、第1種の旅行業登録をしたい会社が旅行業協会に加入をすると、納めるべき保証金は7000万円の5分の1、1400万円ということになるのです。
1400万円も、一般的な感覚でいえばかなり高額な気もしますが、それでも7000万円を支払うことに比べたら、ハードルはかなり下がったといえます。
旅行業協会に加入した場合の営業保証金 | |
第1種旅行業 | 1400万 |
第2種旅行業 | 220万 |
第3種旅行業 | 60万 |
地域限定旅行業 | 3万 |
<表2>旅行業協会に加入した場合の営業保証金の金額 |
上記が、旅行業協会に加入した場合の保証金金額となります。
ちなみに、旅行業協会に加入した場合に納める保証金のことを「弁済業務保証金分担金」といいます。
便宜上、旅行業協会に加入しない保証金のことを「保証金」、協会に加入する保証金のことを「分担金」と使い分けていきます。
旅行業協会に加入した場合としない場合でそれぞれ支払うことになる保証金・分担金の金額をまとめた表が、以下の表です。
保証金 | 分担金 | |
第1種旅行業 | 7000万 | 1400万 |
第2種旅行業 | 1100万 | 220万 |
第3種旅行業 | 300万 | 60万 |
地域限定旅行業 | 15万 | 3万 |
<表3>保証金と分担金の比較 |
基準資産額
旅行業の登録には、保証金の他に基準資産額というものも判断されます。
この基準資産額については、
①どの種類で旅行業登録をするのか
②会社名義で登録するのか、個人名義で登録するのか
③会社名義で登録する場合、設立直後の会社か、一回以上確定申告をしているか
によって、金額や、計算方法が異なります。
どの種類で旅行業登録をするのか
保証金と同じように、第1種から地域限定旅行業まで、下記の表のように基準資産額が決められています。
旅行業者代理業と旅行サービス手配業については、基準資産額はありません。
基準資産額 | |
第1種旅行業 | 3000万 |
第2種旅行業 | 700万 |
第3種旅行業 | 300万 |
地域限定旅行業 | 100万 |
<表4>種別ごとの基準資産額 |
どの種類で登録するかを決めたら、次にその基準資産額を満たしているかどうかの確認作業をすることになります。
その確認作業が、②と③ということになりますが、こちらについては別の記事で詳しく解説をしたいと思います。
保証金と基準資産額の関係
ここまで、営業保証金と基準資産額という話をしてきました。
例えば第3種の旅行業登録をしようと思うと、保証金は300万円(旅行業協会に加入する場合は分担金が60万円)、基準資産額は300万円なので、300万円+300万(60万)で600万、旅行業協会に加入する場合は360万円の費用が最低でも必要になってきます。
旅行業者代理業と旅行サービス手配業については、営業保証金も基準資産額も規定がありませんので、もっと小さい規模からスタートすることも可能です。
営業保証金・分担金 | 基準資産額 | 合計 | |
第1種旅行業 | 7000万 (1400万) | 3000万 | 1億 (4400万) |
第2種旅行業 | 1100万 (220万) | 700万 | 1800万 (920万) |
第3種旅行業 | 300万 (60万) | 300万 | 600万 (360万) |
地域限定旅行業 | 15万 (3万) | 100万 | 115万 (103万) |
<表5>営業保証金・分担金と基準資産額の一覧 |
まとめ
以上の費用はあくまでも、旅行業の登録をするために必要な費用です。
事務所を借りて事業を立ち上げる場合には当然事務所の家賃が発生しますし、旅行業協会に加入する場合は、各旅行業協会の入会費と年会費を支払う必要があります。
参考までに、日本旅行業協会(JATA)に加入する場合、入会費が80万円、年会費が35万円かかります。
全国旅行業協会(ANTA)の場合は、各都道府県の支部によって会費が異なるため、それぞれ問い合わせをする必要があります。
また、旅行業というビジネスはお客様からの依頼を受けてバスや宿を手配して、お客様がきちんと旅行の行程を達成できるように、マネジメントすることが求められます。
そのためには、手配したバスや宿へ料金を先払いする必要がありますので、実際にはお客様から旅行代金をもらうよりも前に、もっと多くの金額の出費が発生します。
ですので、実際に旅行業を始める場合には、この記事で解説をした営業保証金+基準資産額の金額だけでなく、営業開始後3か月~6か月分の必要経費を計算して、その分も上乗せして開業資金を用意するべきです。
当事務所では旅行業の登録に必要なお手続きはもちろん、営業開始後を見据えた業務フローのご相談や事業計画の作成等も行っております。
事業が軌道に乗るかどうかは事前の準備が7割といいますので、ぜひ一度は専門家にご相談ください。
違った視点からのアドバイスが入ることによって、よりよいビジネスプランが出来上がります。
そうすれば、事業が存続していく確率も比例して上がっていきます。
まずは、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
あなたからのご連絡をぜひお待ちしております。
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