第3種旅行業登録
旅行業は、取扱う商品や営業形態によっていくつかの種類に分類することができます。
手続き上も、それぞれの分類によって登録に必要な条件が異なります。
近年の法改正により、第3種旅行業の取扱うことが出来る旅行業務の範囲が広がりました。
基本的に募集型の企画旅行は実施できませんが、隣接自治体を周遊するツアーに限っては実施することが出来るようになっています。
オーダーメイドを得意とする小さな旅行会社や、とりわけ地方観光の中心となるようなホテル・旅館にとってメリットが大きいのが第3種の特徴でしょう。
本ページでは第3種の旅行業登録手続きに絞って、解説をしていきます。
第3種旅行業ができること
第3種旅行業では、原則として募集型企画旅行に関する旅行業務を取扱うことが出来ません。
つまり、
①受注型企画旅行
②手配旅行
を取扱うことができるのが、第3種旅行業なのです。
また、他の旅行会社が販売している募集型企画旅行の委託代理販売や、旅行相談についても当然取扱うことが出来ます。
ただし例外として、旅行業務を行う営業所がある市区町村に隣接している市区町村の範囲内で完結するツアーであれば、募集型企画旅行も実施することが出来ます。
例えば第3種旅行業者の営業所が東京都千代田区にあるとします。
東京都千代田区は、同じく東京都中央区、港区、新宿区、文京区、台東区とその区境が隣接しているので、これらの地域内で完結する募集型企画旅行の作成・販売・実施ができるのです。
企画旅行 | 手配旅行 | 他社募集型企画旅行の 代理販売 | 旅行相談 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
海外募集型 | 国内募集型 | 受注型 | ||||
第3種旅行業 | × | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
募集型企画旅行とは
募集型企画旅行は、業界的にはパッケージとか、パックツアーと呼ばれています。
旅行会社さんの店舗に行くと『緑と水の都、江戸の軌跡をめぐる周遊ツアー!』みたいな、パンフレットが置いてあるかと思います。
イメージとしては、そのようなパンフレット商品を思い描いてください。
法律上は、
①旅行会社が
②目的地や日程、運送機関や宿泊施設、その他の観光施設、料金のような旅行計画を
③旅行者を募集する目的で
④事前に作成して
⑤計画の実施に必要な各施設や業者との契約をする行為
であると定められています。
特に大事なのが、③と④の
募集する目的で
事前に
旅行の計画を作成することです。
第3種の旅行業者は、隣接自治体向けの募集型旅行のみを実施できるということです。
余談ですが、「ミステリーツアー」のような、旅行者側から見ると目的地などが分からないような場合であっても、実態としては目的地が決まっていて、旅行業者による事前の航空機やバスの手配、宿泊施設の手配がされているものは、募集型の企画旅行に該当します。
受注型企画旅行とは
受注型企画旅行は、業界的にはオーダーメイド、テーラーメイドと呼ばれることがあります。
イメージとしては、社員旅行や修学旅行が該当するかと思います。
旅行会社に依頼をして、オリジナルの旅行企画を作ってもらうということですね。
法律上は、
①旅行会社が
②目的地や日程、運送機関や宿泊施設、その他の観光施設、料金のような旅行計画を
③旅行者から依頼を受けて作成して
④計画の実施に必要な各施設や業者との契約をする行為
であると定められています。
大事なのは③の
旅行者から依頼を受けて
旅行の計画を作成するという部分です。
旅行者を募集するために事前に計画を作るのか、それとも旅行者から依頼を受けた後に計画を作るのか、
ここが募集型と受注型企画旅行の境目となります。
手配旅行とは
手配旅行とは、旅行を予定している方が、旅行会社に依頼をして航空券やホテルの予約を取ってもらう行為が該当します。
受注型企画旅行との違いは難しいところですが、
①計画性
②料金の包括性
がその大きな違いです。
計画性とは、旅行会社が旅行計画を作成するのかどうかというところです。
手配旅行は、あくまでも航空券やホテルの予約をするだけで、旅行に関する日程や目的地などの計画を作成するわけではありません。
料金の包括性とは、企画旅行の場合は旅行商品全体として○○円、といった形で、個別のホテルがいくらだとか航空機がいくらだとか、いわゆる内訳を明示する必要がありません。
一方で手配旅行の場合には、各航空券の代金と旅行会社が定める自社の手配手数料の内訳を明示して旅行者に請求します。
ですので、計画性が無く、料金を内訳明示しているものは手配旅行に該当することになります。
他社募集型企画旅行の代理販売とは
他社募集型企画旅行の代理販売とは、「他社」の「募集型企画旅行」を「代理販売」することです。
別の会社さんと委託販売契約を結んで、売ってもらう、売ってあげるということです。
委託契約を結ぶことが出来るのは募集型企画旅行だけです。
旅行相談とは
旅行相談とは、有償で、旅行に関する相談を受ける内容の契約です。
これは旅行業者だけができるもので、旅行業者代理業者と旅行サービス手配業者は行うことが出来ません。
お金に関する条件
基準資産額
基準資産額とは、旅行業を営むにあたって最低限用意しておかなければいけない金額のことです。
これには計算方法があり、
①個人事業主
②決算期を迎えていない新設法人
③一度でも決算期を迎えた法人
によって、それぞれ証明方法がちょっとずつ異なります。
第3種旅行業の場合、この基準資産額は最低300万円無いと、旅行業の登録ができません。
ではこの基準資産額の計算方法ですが、お手元に会社の貸借対照表を出してみてください。
下記のとおりです。
<基準資産額=資産の総額-不良債権等-繰延資産-営業権-負債の総額-営業保証金の額>
具体例を出します。
②の決算期を迎えていない新設法人で旅行業の登録をする場合、会社設立時の開始貸借対照表を使用します。
通常は、資本金(払い込んだ金額)=資産の総額(現金or預金)になっているはずです。
不良債権(回収見込みのない売掛金等)や営業権(会社買収時ののれん代等)は存在しないと思いますので、開始貸借対照表の資産の総額から納めるべき営業保証金の金額を引いた金額が、300万円以上になっていればOKです。
さらに具体的に言うと、後述する旅行業協会に加入しない場合の営業保証金が300万円、旅行業協会に加入する場合の弁済業務保証金分担金が60万円です。
300万円+60万円(or300万円)の資本金で会社設立すれば、基準資産額の条件をクリアすることになります。
もし難しくてよくわからない場合は、基準資産額チェックサービス(有料)もございますので、一度ご相談ください。
営業保証金
前でも少し触れましたが、旅行業の登録にあたって営業保証金を納める必要があります。
これは、旅行会社が倒産をしてしまうなど、万が一があった場合に、旅行契約中の旅行者の金銭的な権利を保護するための制度です。
第3種旅行業の場合は、300万円の保証金を供託所に預ける必要があります。
あくまで国に預けている金額ですので、旅行業を廃止する場合は、後日手元に戻ってきます。
ただし、戻ってくるまでに約1年弱の時間がかかります。
弁済業務保証金分担金
営業保証金、高いと思った方もいらっしゃると思います。
確かに300万円という金額であればご用意できる方もいらっしゃるとは思います。
とはいえ、すべての方がその資金をすぐに用意できる訳ではありません。
そんな方もご安心ください。
もう少し簡単に保証金を納めることが出来る制度があります。
それが、弁済業務保証金分担金です。
ちょっと長ったらしくで分かりにくいですが、これは、「旅行業協会」という協会団体に加入した場合、本来納めるべき保証金金額の5分の1の金額を納めてくれたらそれでいいよ、という制度です。
すごく簡略化すると、協会に加入してみんなでお金を出し合う、共済のようなものだと思ってください。
ですので、旅行業協会に加入して第3種の旅行業登録をする場合、この弁済業務保証金分担金は60万円で良い、ということになります。
人(資格者)に関する条件
旅行業務取扱管理者
旅行業の登録は、お金の条件以外にもう1つ、人に関する条件が定められています。
人の条件の1つ目が、この旅行業務取扱管理者を選任できるかどうか、というところです。
この取扱管理者は国が実施する試験に合格した人だけがなることができる資格です。
現在、
①総合
②国内
③地域限定
という3種類の旅行業務取扱管理者資格が存在します。
旅行業務を行う営業所で海外に関する旅行契約を扱う場合、必ず①の総合管理者の選任が必要です。
第3種旅行業で、国内旅行しか取り扱うことが無い営業所の場合は、②の国内管理者でも問題ありません。
欠格要件
旅行業務取扱管理者という資格者の設置以外にも、会社の役員や取扱管理者が一定の条件に該当してしまうと登録することが出来なくなってしまいます。
これを欠格要件といいます。
法律上明確に決められているので、ここではそのままお伝えいたします。
(1)旅行業法第19条の規定により旅行業又は旅行業者代理業の登録を取り消され、又は第旅行業法37条規定により旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に当該法人の役員であった者で、当該取消しの日から5年を経過していないものを含む。)
(2)禁固以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
(3)暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。)
(4)申請前5年以内に旅行業務に関し不正な行為をした者
(5)営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記(1)~(4)のいずれかに該当するもの
(6)成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
(7)法人であって、その役員のうちに上記(1)から(4)又は(6)のいずれかに該当するもの
(8)暴力団員等がその事業活動を支配するもの
登録に必要な書類
ここまで見てきた
①お金に関する条件
②人に関する条件
をクリアすると、初めて旅行業の登録申請をするスタートラインに立つことが出来ます。
ここからは、旅行業の登録申請に最低限必要になる書類を一覧化します。
会社等の状況によってはここに記載している書類以外にも必要になることがあります。
①旅行業登録申請書&登録簿
②会社の定款
③法人の登記簿謄本
④宣誓書(役員、監査役、旅行業務取扱管理者)
⑤旅行業の事業計画書
⑥旅行業の組織概要図
⑦決算書類
⑧財務監査証明書or確定申告書類一式
⑨旅行業務取扱管理者選任一覧表
⑩旅行業務取扱管理者の合格証
⑪旅行業務取扱管理者の履歴書
⑫定期研修修了証
⑬営業所の使用権原を証明する書類
⑭事故処理体制の説明書面
⑮旅行業約款
その他必要なこと
実は大事なことを申し上げていませんでした。
特に法人として旅行業の登録をする場合に必要なことです。
会社には、定款で事業目的を定めています。
この事業目的の部分に「旅行業」「旅行業法に基づく旅行業」という記載が必要です。
もし会社の定款や登記簿謄本の事業目的を見返していただいて、これらの文章が入っていない場合には、文章を追加してから手続きを始める必要があります。
まとめ
旅行業の登録で一番ネックになってくるところが、基準資産額300万円の確認です。
新規登録の時はもちろん、地域限定からの種別変更、3種の更新時にも、基準資産額300万円の確認が必要になります。
実際によくあるのが、更新時に基準資産額300万円を満たしていなくて、更新することが出来なかった、というような事例です。
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あなたからのご連絡を心よりお待ちしております。
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